歯科パノラマX線画像のMCI分類とは?|骨と歯の健康連携ポータル

歯科パノラマX線画像のMCI分類とは?

ナレッジ

 

 

◇はじめに◇

 

近年、骨粗鬆症について歯周病の増悪や歯の喪失のリスク因子であることが明らかとなり、歯科でも重要な疾患となっています。 

骨粗鬆症が注目され始めた 1990 年代より、歯科領域でも歯を支える顎骨の粗鬆化に関心が集まっています。

 

また、パノラマX線撮影装置は歯科医院の90%以上が保有しており、国内で年間約1,500万件の検査が実施されています。

骨粗鬆症の可能性が疑われるパノラマX線画像所見として「下顎骨下縁(特に頤孔付近)に皮質骨の粗鬆(粗造)化を認める」ことがあげられ、 その具体的な指標としては次の2点があります。

 

•下顎皮質骨形態が MCI (下顎皮質骨形態指標: Mandibular Cortex Index)分類(以下MCI分類)あるいはクレメッティ指標(Klemetti Index)で, 2 型または 3 型に相当する。

•画像上の皮質骨が薄く(約 3mm 以下)なっている。 

 

本記事では、MCI分類について分かりやすく解説します。

 

 

◇歯科X線画像による骨粗鬆症スクリーニングはどのように始まった?◇

 

全身の骨粗鬆症が注目され始めた1990年代より、歯科でも歯を支える顎骨の骨粗鬆症に関心を持つ研究者が現れました。彼らが骨粗鬆症の発生部位と考えたのは、手足の骨と同じ長管骨の構造を持つ下顎骨でした。基礎的研究により全身の骨粗鬆症の患者では下顎骨の骨構造が粗くなることは確認されましたが、大腿骨や腰椎のように体重を支えない顎骨には脆弱性骨折が生じないため、顎骨では現在の定義に合致する骨粗鬆症は確認されていません。

 

一方、歯科治療ではX線撮影が多用されるので、歯科X線画像から骨粗鬆症の発見に結びつく画像所見に注目した研究者がいました。なかでも、歯と周囲歯槽骨のみならず舌骨から中頭蓋底レベルまでの骨や軟組織の一部が総覧像として観察でき歯科臨床でう蝕や歯周病の診断に多用されるパノラマX線画像を用いて骨粗鬆症をスクリーニングする方法が有望視されました。特に注目されたのは、「下顎骨下縁の皮質骨」でした 。

 

 

 

◇パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングとは?◇

 

骨粗鬆症スクリーニングに有効なことがわかったのは、オトガイ孔の下の位置における下顎骨下縁皮質骨の厚さ(MCW:Mandibular Cortical Width)とMCI分類でした。どちらも数多くの臨床研究がおこなわれましたが、これまでに発表された多数の論文に示されたエビデンスを吟味したメタアナライシスの結果は、パノラマ画像により下顎皮質骨の形態をMCI分類評価するスクリーニング方法の診断能が、感度=0.806、特異度=0.643で、骨粗鬆症の発見に有効である事を示しました。

 

パノラマX線撮影による骨粗鬆症スクリーニングでは、歯科診療のために撮影されたパノラマX線画像を骨粗鬆症リスク判定に利用するため、改めてX線撮影することなく骨粗鬆症のリスクを判定することができます。これは、地域医療を通じて国民の健康増進と医療費の削減に寄与することにつながります。

 

日本歯科放射線学会では、2021年にパノラマX線画像からの骨粗鬆症スクリーニングに関する臨床ガイドラインを発行しました。また、日本骨粗鬆症学会および日本整形外科学会に対して、会員への「歯科パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニング」の周知を依頼しています。

 

参考文献:

Calciolari E, Donos N, Park JC, Petrie A, Mardas N.Panoramic measures for oral bone mass in detecting osteoporosis: a systematic review and meta-analysis.J Dent Res. 2015 Mar;94(3 Suppl):17S-27S.

Taguchi A, Tanaka R, Kakimoto N, Morimoto Y, Arai Y, Hayashi T, Kurabayashi T, Katsumata A, Asaumi J. Clinical guidelines for the application of panoramic radiographs in screening for osteoporosis. Oral Radiology. 2021;37(2):189-208.

 

 

◇パノラマX線画像MCI(下顎皮質骨形態指標: Mandibular Cortical Index)分類とは?◇

 

 

MCI分類では、パノラマX線像で左右オトガイ孔下方の皮質骨を以下の1~3型に分類されます。

 

 

1型: 両側皮質骨の内側表面がほぼスムース

 

2型: 皮質骨の内側表面が不規則となり、内側近傍の皮質骨に2~3の線状吸収を認める

 

3型: 皮質骨全体に渡り、高度な線状の吸収と皮質骨の断裂を認める

 

 

2型以上が「骨粗鬆症の可能性あり」と判断されます。

 

 

 

 

◇最後に◇

 

 

本記事でご紹介しましたMCI分類の実践編として、下記の記事でクイズを5題出題しています。

是非、ご挑戦ください。

 

▼パノラマX線画像のMCI分類に挑戦しよう! (読影クイズ)

https://honetoha.jp/info/571/

 

 

 

 

監修:勝又 明敏 先生

 

 

朝日大学歯学部歯科放射線学分野 教授

 

 

【略歴】

1987年 朝日大学 歯学部 歯学科 卒業

1987年 朝日大学 歯学部 助手(歯科放射線学)

1996年 朝日大学 歯学部 講師

1998年 朝日大学 歯学部 助(准)教授

2011年 朝日大学 教授(現在に至る)

 

【所属学会等】

日本歯科放射線学会

日本歯科人工知能研究会 (代表理事)

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