【インタビュー】南国ひとせ歯科|骨と歯の健康連携ポータル

【インタビュー】南国ひとせ歯科

インタビュー

骨粗鬆症のサインを医科につなげるパイプ役になれればと考え、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みを開始。 この取り組みが、スタッフの成長につながることも期待しています。
予防と治療の両面でサポートする総合歯科として、高知県南国市民の歯の健康を守っている南国ひとせ歯科様に、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みを始めた背景や効果などについて伺いました。

高血圧や糖尿病、骨粗鬆症など全身の不調のサインを医科につなげるパイプ役に

――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みに着目した経緯をお聞かせください。

まず、私の祖母に関する実体験が骨粗鬆症に着目するきっかけのひとつになっています。祖母はとても元気な人でしたが、ある日、自宅の階段から転落して骨折してしまいました。すぐに入院したものの、以降は体力や気力も急激に低下してしまいました。今では、骨粗鬆症からADL(日常生活動作)の低下につながるケースだと推測できますが、当時は高齢者の骨折が命に関わる危険があるという事実に大きな衝撃を受けました。
また、私は広島大学出身ということもあり、近隣の呉市が、住民の高齢化により発生する健康問題の解決に向けて取り組んでいたプロジェクト「呉市骨粗しょう症重症化予防プロジェクト」を身近に見てきました。これも、骨粗鬆症に着目した要因のひとつになっています。
さらに、歯科クリニック開業後に芽生えた考え方も影響しています。多くの方にとって医科は、何らかの体の不調を感じたときに行く場所という認識であり、病気を予防する観点で医科に行くことはほとんどないと思います。これに対して歯科は、虫歯や歯周病といった疾患で訪れる方だけでなく、歯の健康を維持する予防の観点で継続的にメンテナンスに通う方も大勢いらっしゃいます。つまり、継続して通う唯一の医療機関が歯科になります。
であれば、我々が高血圧や糖尿病、骨粗鬆症など全身の不調のサインを早期に感知することができたなら、それを医科につなげるパイプ役になれるのではないかと考えるようになりました。
こうした考え方は、地域医療の中で歯科が果たす役割という観点からもプラスの側面が大きいと思います。
ただし、我々はあくまで歯科であり、医科の分野は専門外ですので、その領域に立ち入るつもりはありません。あくまでも、「パイプ役に徹する」というのが大事なスタンスになります。

院長 竹村 翼

院長 竹村 翼

パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの代表的な指標を用いれば、話の解像度が高まる

――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組み状況を教えてください。

2024年10月からパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みを開始しました。一般的に骨粗鬆症のリスクが高いと言われる50歳以上の患者様に限定し、これまで多くのリスク評価を行ってきました。開始当初はパノラマX線画像を撮影した際に必ず骨粗鬆症スクリーニングを行っていましたが、新規よりも継続的な治療に訪れる患者様が多いため、大部分の患者様のスクリーニングは終わっています。最近は、メンテナンス期に入った患者様の2年ごとに撮影するパノラマレントゲン撮影のタイミングで、スクリーニングすることが多い状況です。

スクリーニングは、特定のスタッフが決まって行うわけではなく、私を含めて当院のスタッフの誰かが状況に応じて対応するスタイルを取っています。また、この取り組みを開始する際には、スタッフに新たな技術的・心理的負担(手間)を極力かけないよう、リスク評価を支援するソフトウェアを活用することとしました。結果、通常の業務フローに違和感なく取り入れることができ、スムーズなスタートを切ることができました。

――スクリーニング結果を患者様にどのように伝えているのかお聞かせください。

日々の歯科医療を提供し、患者様に向き合うことを最優先するなかで、骨粗鬆症のリスクを患者様や連携する医科にきちんと伝えることは容易ではありません。そこで、スクリーニングを始めるにあたっては、顎骨の脆弱性を評価する代表的な指標(MCWやMCI分類)を用いた定型のレポートを、患者様や医科の先生にお渡しすることにしました。パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニング結果を視覚的に分かりやすく、客観的に伝えられれば理解が深まると考えました。

このスクリーニング結果は、普段の生活状況をヒアリングする過程でお渡ししています。実はこのヒアリングこそが、患者様のQOL(生活の質)向上において極めて重要な役割を果たしています。診察室では歯科医師に気を遣って「入れ歯で何でも食べられる」とおっしゃる患者様でも、管理栄養士やスタッフによる丁寧な対話を通じ、「友人とのランチで周りを待たせるのがストレス」といった本当の困りごとを打ち明けてくださることがあります。

このように歯科医師の前では言えない本音や生活背景を深く理解できることは大きなメリットです。単なるスクリーニングにとどまらず、本当に解決したい課題に寄り添った適切な選択肢(インプラントなどの自費診療を含む)を押し付けにならない形で自然にご提案できるようになりました。

さらに、明確な指標があることで「1~2年後の撮影時に経過を追いましょう」と自然に伝えられるため、定期メンテナンスへの継続来院を促すコミュニケーションツールとしても非常に有効に機能しています。

パノラマX線画像をもとに骨粗鬆症スクリーニングを実施

パノラマX線画像をもとに骨粗鬆症スクリーニングを実施

患者様の希望を優先しつつ、対話のなかで最善策を導き出していく

――リスク評価で重度異常の評価が出た患者様には、どういった対応をされているのでしょうか。

重度異常の評価が出た患者様にはその旨をお知らせし、医科紹介を希望する患者様には、紹介状を書きます。実際に整形外科の診断を受け、骨粗鬆症の治療に入っている患者様からは、「分かって良かったです」「本当にありがとうございました」といった感謝の言葉をいただくこともあります。
一方で、患者様との対話が非常に重要だと痛感させられることも多々あります。
とくに難しいと思うのは、患者様から「この病院を紹介してほしい」と指定される場合です。ご指定の病院と連携できていない場合、いきなり紹介状を書くことは控えたいので、患者様とのさらなる対話が必要になります。また、かかりつけの病院がある方は「わざわざ他の病院に行きたくない」とおっしゃったり、ご自身でかかりつけの病院に行かれる方もいます。
どちらにしても、無理強いはできないため、患者様の希望を優先しつつ、対話のなかで患者様にとっての最善策を導き出すようにしています。

医科歯科連携は医療機関や医療従事者の効率化に関わる取り組み

――骨粗鬆症スクリーニングの実施にあたっては医科との連携が重要になると思いますが、現在の連携状況はいかがでしょうか。

おかげさまで、当院はパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを通じて整形外科と連携することができています。そこで実感したのは、医科歯科連携は医療機関や医療従事者の効率化に関わる取り組みだということです。

その根本にあるのはリソース不足です。高齢化や過疎化が進み、この高知でも人手不足が顕在化しています。医療に関しても同様で、限られたリソースのなかで患者様に適切な医療を継続的に提供していくためには、歯科と医科はもちろん、さまざまな医療機関・医療従事者が連携し、効率的に医療を回していく必要があります。そういう効率化の観点からいうと、医科歯科連携は骨粗鬆症スクリーニングの範囲に限らず、積極的に取り組むべきだと考えています。

ただ一方で、医科歯科連携には難しい側面もあります。その理由もリソース不足に起因しています。もちろん、紹介だけなら問題ないという先生はたくさんいらっしゃいます。実際、挨拶に行って即座に断られたことはありません。しかし、いざ医科歯科連携の話になると、紹介状の作成や情報交換といった付帯業務の部分が大きな障壁となります。限られたリソースのなか、付帯業務に手間を取られるのは好ましいとはいえません。

南国ひとせ歯科を運営している私の立場で考えると、その心情はよく分かります。しかし、医科にとってもさまざまなメリットがあることも事実です。私自身は今後も、医科歯科連携の重要性やメリットを発信しながら、何らかの糸口を見つけて連携先を増やしていく取り組みを進めていきたいと考えています。

スタッフが「社会的な責任を果たせる医療従事者」へと成長することに期待

――南国ひとせ歯科における今後の骨粗鬆症スクリーニングに対する取り組みをお聞かせください。

ひとつは、現在お付き合いのある整形外科との関係強化を図っていきたいと考えています。また、連携先を増やしていく取り組みも行っていくつもりです。

その一環として、当院のスタッフには日本骨粗鬆症学会が認定する「骨粗鬆症マネージャー」の試験を受けてもらう予定です。これには、当院が一丸となって骨粗鬆症治療に取り組む姿勢を示す目的もありますが、それ以上に、スタッフの成長を促したいという強い思いがあります。

歯科医院は、閉鎖的になりがちな環境です。社会の厳しい目や批判にさらされる機会が少ないため、スタッフ一人ひとりのなかで「社会的な責任を果たせる医療従事者」としての意識が、無意識のうちに薄れていってしまうのではないか。私はそのような危機感を抱いていました。この現状を打破し、スタッフの視野を院外へと広げる施策として着目したのが、骨粗鬆症マネージャーの資格取得でした。

試験に合格した際には、学会へ参加して当院の取り組みを発表してもらうことまで視野に入れています。自院や地域の外に出て多様な方と関わり、自ら課題を見つけて解決に取り組む経験は、スタッフが「社会的な責任を果たせる医療従事者」へと成長する大きな糧になると期待しています。

スクリーニング画面

副院長 歯科衛生士 近藤 紗弥乃

・医院プロフィール
クリニック外観
南国ひとせ歯科
所在地:〒783-0006 高知県南国市篠原58-1
2023年開業。口内の健康状態や虫歯・歯周病の性質を正しく、分かりやすく伝え、歯の健康を予防と治療の両面でサポートする総合歯科。適切な知識・技術に加え、理想的な治療を行うための設備も充実。口腔器全体を診るための口腔内カメラ、口腔内スキャナー、CTスキャン、被曝のない虫歯診断機、接着にこだわった機器・設備、滅菌・洗浄の機器・設備などを導入している。院内2階には講習会やイベントを開催できるセミナールームを設置。子ども連れの患者が安心して治療を受けられる託児スペースも設けている。

竹村 翼 院長
院長 歯科医師/歯学博士 竹村 翼
兵庫県私立白陵高等学校卒業、広島大学歯学部 歯学科卒業、広島大学病院歯科研修医修了 優秀歯科研修医表彰、広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 歯周病態学分野研究室にて博士課程修了、歯学博士 広島大学病院 歯周診療科にて勤務

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