【インタビュー】南国ひとせ歯科
インタビュー

高血圧や糖尿病、骨粗鬆症など全身の不調のサインを医科につなげるパイプ役に
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みに着目した経緯をお聞かせください。

院長 竹村 翼
パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの代表的な指標を用いれば、話の解像度が高まる
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組み状況を教えてください。
2024年10月からパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みを開始しました。一般的に骨粗鬆症のリスクが高いと言われる50歳以上の患者様に限定し、これまで多くのリスク評価を行ってきました。開始当初はパノラマX線画像を撮影した際に必ず骨粗鬆症スクリーニングを行っていましたが、新規よりも継続的な治療に訪れる患者様が多いため、大部分の患者様のスクリーニングは終わっています。最近は、メンテナンス期に入った患者様の2年ごとに撮影するパノラマレントゲン撮影のタイミングで、スクリーニングすることが多い状況です。
スクリーニングは、特定のスタッフが決まって行うわけではなく、私を含めて当院のスタッフの誰かが状況に応じて対応するスタイルを取っています。また、この取り組みを開始する際には、スタッフに新たな技術的・心理的負担(手間)を極力かけないよう、リスク評価を支援するソフトウェアを活用することとしました。結果、通常の業務フローに違和感なく取り入れることができ、スムーズなスタートを切ることができました。
――スクリーニング結果を患者様にどのように伝えているのかお聞かせください。
日々の歯科医療を提供し、患者様に向き合うことを最優先するなかで、骨粗鬆症のリスクを患者様や連携する医科にきちんと伝えることは容易ではありません。そこで、スクリーニングを始めるにあたっては、顎骨の脆弱性を評価する代表的な指標(MCWやMCI分類)を用いた定型のレポートを、患者様や医科の先生にお渡しすることにしました。パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニング結果を視覚的に分かりやすく、客観的に伝えられれば理解が深まると考えました。
このスクリーニング結果は、普段の生活状況をヒアリングする過程でお渡ししています。実はこのヒアリングこそが、患者様のQOL(生活の質)向上において極めて重要な役割を果たしています。診察室では歯科医師に気を遣って「入れ歯で何でも食べられる」とおっしゃる患者様でも、管理栄養士やスタッフによる丁寧な対話を通じ、「友人とのランチで周りを待たせるのがストレス」といった本当の困りごとを打ち明けてくださることがあります。
このように歯科医師の前では言えない本音や生活背景を深く理解できることは大きなメリットです。単なるスクリーニングにとどまらず、本当に解決したい課題に寄り添った適切な選択肢(インプラントなどの自費診療を含む)を押し付けにならない形で自然にご提案できるようになりました。
さらに、明確な指標があることで「1~2年後の撮影時に経過を追いましょう」と自然に伝えられるため、定期メンテナンスへの継続来院を促すコミュニケーションツールとしても非常に有効に機能しています。

パノラマX線画像をもとに骨粗鬆症スクリーニングを実施
患者様の希望を優先しつつ、対話のなかで最善策を導き出していく
――リスク評価で重度異常の評価が出た患者様には、どういった対応をされているのでしょうか。
医科歯科連携は医療機関や医療従事者の効率化に関わる取り組み
――骨粗鬆症スクリーニングの実施にあたっては医科との連携が重要になると思いますが、現在の連携状況はいかがでしょうか。
おかげさまで、当院はパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを通じて整形外科と連携することができています。そこで実感したのは、医科歯科連携は医療機関や医療従事者の効率化に関わる取り組みだということです。
その根本にあるのはリソース不足です。高齢化や過疎化が進み、この高知でも人手不足が顕在化しています。医療に関しても同様で、限られたリソースのなかで患者様に適切な医療を継続的に提供していくためには、歯科と医科はもちろん、さまざまな医療機関・医療従事者が連携し、効率的に医療を回していく必要があります。そういう効率化の観点からいうと、医科歯科連携は骨粗鬆症スクリーニングの範囲に限らず、積極的に取り組むべきだと考えています。
ただ一方で、医科歯科連携には難しい側面もあります。その理由もリソース不足に起因しています。もちろん、紹介だけなら問題ないという先生はたくさんいらっしゃいます。実際、挨拶に行って即座に断られたことはありません。しかし、いざ医科歯科連携の話になると、紹介状の作成や情報交換といった付帯業務の部分が大きな障壁となります。限られたリソースのなか、付帯業務に手間を取られるのは好ましいとはいえません。
南国ひとせ歯科を運営している私の立場で考えると、その心情はよく分かります。しかし、医科にとってもさまざまなメリットがあることも事実です。私自身は今後も、医科歯科連携の重要性やメリットを発信しながら、何らかの糸口を見つけて連携先を増やしていく取り組みを進めていきたいと考えています。
スタッフが「社会的な責任を果たせる医療従事者」へと成長することに期待
――南国ひとせ歯科における今後の骨粗鬆症スクリーニングに対する取り組みをお聞かせください。
ひとつは、現在お付き合いのある整形外科との関係強化を図っていきたいと考えています。また、連携先を増やしていく取り組みも行っていくつもりです。
その一環として、当院のスタッフには日本骨粗鬆症学会が認定する「骨粗鬆症マネージャー」の試験を受けてもらう予定です。これには、当院が一丸となって骨粗鬆症治療に取り組む姿勢を示す目的もありますが、それ以上に、スタッフの成長を促したいという強い思いがあります。
歯科医院は、閉鎖的になりがちな環境です。社会の厳しい目や批判にさらされる機会が少ないため、スタッフ一人ひとりのなかで「社会的な責任を果たせる医療従事者」としての意識が、無意識のうちに薄れていってしまうのではないか。私はそのような危機感を抱いていました。この現状を打破し、スタッフの視野を院外へと広げる施策として着目したのが、骨粗鬆症マネージャーの資格取得でした。
試験に合格した際には、学会へ参加して当院の取り組みを発表してもらうことまで視野に入れています。自院や地域の外に出て多様な方と関わり、自ら課題を見つけて解決に取り組む経験は、スタッフが「社会的な責任を果たせる医療従事者」へと成長する大きな糧になると期待しています。

副院長 歯科衛生士 近藤 紗弥乃

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