歯科X線画像で骨粗鬆症を見つける!香川県の画期的な医科歯科連携アプローチ|骨と歯の健康連携ポータル

歯科X線画像で骨粗鬆症を見つける!香川県の画期的な医科歯科連携アプローチ

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歯科X線画像で骨粗鬆症を見つける!香川県の画期的な医科歯科連携アプローチ

高齢者の生活の質(QOL)を大きく脅かす原因となるのが、大腿骨や腰椎の骨折を引き起こす骨粗鬆症です。この論文は、歯科医院で日常的に撮影されているパノラマX線画像を活用して、骨粗鬆症の疑いがある患者を早期に発見し、医科での適切な治療へとつなげる香川県の画期的なプロジェクトについて報告しています。

なぜ歯科で骨粗鬆症のスクリーニングができるのか?

 1990年代から、歯科のパノラマX線画像に写る「下顎骨下縁(あごの骨の底の部分)の皮質骨の厚さや形態」を調べることで、骨粗鬆症のスクリーニングが可能であることが研究されてきました。

 近年、歯科のX線撮影装置はほぼ100%デジタル化されており、コンピュータが画像を解析して異常を見つけ出す「コンピュータ支援検出(CADe)」技術の活用が期待されるようになりました。これにより、歯科医師の目だけでなく、システムのサポートを得て効率的なスクリーニングが可能になったのです。

診断支援ソフトウェアの仕組み

 この香川県の事業では、2016年から専用のコンピュータソフトウェアを利用しています。これは確定診断を行う装置ではなく、歯科医師の画像解析を支援して医科への受診勧奨を判断するためのシステムです。

 このソフトウェアは主に以下の3つの指標を用いて解析を行います。

  • MCI(下顎皮質骨形態分類): オトガイ孔付近の下顎骨下縁皮質骨形態を3つのクラスに分類します。
    ※クラス1は正常、クラス2は骨粗鬆症による骨変化の存在が疑われるもの、クラス3は疑いが大きいものと判定されます。
  • 皮質骨の厚さ: オトガイ孔付近の皮質骨の実際の厚さを計測します。
  • 骨形態指数(総合評価): 骨形態と皮質骨の厚さを総合して算出される独自の指標です。
    ※指数が34未満は疑いが「低い」、34以上68未満は「やや高い」、69以上の場合は「高い」とテキストで分かりやすく表示されます。

パノラマX線画像解析によるスクリーニングのイメージ

スクリーニング事業の実績(2017年2月〜2018年5月)

 香川県全域の21の歯科医院と多数の連携協力医療機関(医科)が参加して行われた結果、素晴らしい成果が上がっています。

  • 解析数: 2018年5月までに、合計2,200名の歯科患者のパノラマX線画像を解析しました。
  • 医科への紹介数: スクリーニングの結果、103名が精密検査のために医科へ紹介されました。
  • 疾患の発見数: 医科での確定診断の結果、42例の骨粗鬆症と、20例の骨梁減少症(骨量減少)が新たに発見されました。
  • 高リスク層の成果: 特に骨粗鬆症リスクの高い50歳以上の女性1,381例に限定すると、40例の骨粗鬆症と17例の骨量減少が発見されています。

システムの精度と今後の課題

 ソフトウェアの診断精度を検証したところ、スクリーニングとして非常に有用であることが分かりました。骨形態指数を「51以上を陽性(疑いあり)」と設定した場合、最も高い診断精度が得られました。この基準に沿った場合、感度(病気の人を正しく陽性と判定する確率)は90%、特異度(病気でない人を正しく陰性と判定する確率)は72%という良好な結果でした。

事業を進める上で見えてきた課題

 一方で、事業を進める上での課題も見えてきました。

  • 紹介率の低さ: ソフトウェアで骨粗鬆症の可能性が「高い」と判定されたにもかかわらず、実際に医科へ紹介受診した症例は約33.4%に留まりました。
  • 歯科医院ごとの差: 医科へ紹介された103例のうち、実に72.8%(75例)が、紹介に積極的だったわずか3軒の歯科医院からのものでした。

 今後は、高い精度が期待できる「骨形態指数51以上」を医科へ紹介する新たな目安としつつ、協力歯科医院からの医科への紹介率を底上げしていくことが、香川県歯科医師会の課題とされています。

・解説論文情報
パノラマX線画像を用いた骨粗鬆症予防に関する香川県医科歯科連携事業
著者: 丸尾 修之,豊嶋 健治,勝又 明敏
掲載誌: 日本歯科医療管理学会雑誌
巻号頁: 2019年 53巻 4号 p.206-211
【論文の意義】
香川県における診断支援ソフトウェアを活用した先駆的なスクリーニング事業の具体的な成果(発見数や診断精度など)と課題を詳細に報告。日常的な歯科診療を通じた骨粗鬆症患者の早期発見モデルとして、非常に価値の高いデータを提供しています。

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