【インタビュー】医療法人社団 如月会 澤野歯科クリニック
インタビュー

フレイルを見極めるうえでパノラマX線画像を活用した骨粗鬆症のスクリーニングが有効な指標に
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取組みをはじめた背景についてお聞かせください。
もうひとつは、目にした資料で、伺ったことがある先生のお名前を見つけたことも、導入背景として挙げることができます。記憶を探っていくと、大学病院在籍時に拝見したパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの論文にたどり着きました。こうしたオンライン講習会や論文を通じ、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングは多角的にフレイルを見極めるうえで、指標のひとつになると考えるようになりました。
慢性疾患からフレイルにつながってしまうケースを削減したい
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みをはじめた理由をお聞かせください。
当院では、子どもからご両親、その祖父母まで、家族全員で来院されるケースが多いため、家族ぐるみのお付き合いを大切にしています。そのため、単に歯科医療に注力するのではなく、患者様の健康状態を注意深く観察し、かかりつけの歯科医院として、日頃から気軽に相談できる存在でありたいと考えています。
とくに高齢の方は、糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などの慢性疾患からフレイルにつながってしまうケースが少なくないため、日頃から患者様を観察し、適切なカウンセリングを行うことが重要だと考えています。
この点、骨粗鬆症は糖尿病や高血圧とは異なり、歯科クリニックでそのリスクを判断するのは容易ではありません。しかし、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを活用し、そのスクリーニング結果を指標としてお伝えできれば、患者様に理解していただける可能性は高まります。こうした想いから、取り組みをはじめました。
――通常は骨粗鬆症のリスク評価を行うことは難しいのでしょうか。
おっしゃる通り、通常、骨粗鬆症のリスクを判断するのは困難です。ですので、一定以上の年齢であることや性別(骨粗鬆症のリスクは女性は男性の3倍)そして、腰が曲がっているかどうかなどの色々な要因を判断材料に加える必要があります。とくに腰が曲がっている場合、顎の位置が変わって噛む動きに影響が出ることがありますので、歩き方を含めて注視しなければなりません。
こうした状況ですから、代表的な指標(顎骨の脆弱性を評価するための代表的な指標として、MCWおよびMCI分類があります。)やリスク評価を支援するソフトウェアなどのあるパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングが加われば、リスク評価の精度を大きく高められると期待しました。
院長 澤野 宗如
SPTに移行している患者のパノラマX線画像をスクリーニング
――取り組みの状況を教えてください。
紹介状を書く場合の基準となるリスク評価は、解析結果が重度異常(正常・軽度異常・重度異常の三段階)で下顎皮質骨の形態指標がⅢ型(ケースによってはⅡ型を含む)としています。ただし、紹介状を書くか書かないかの選択は、患者様としっかりカウンセリングしてから決めています。そもそも紹介状を書いても、検査や治療に行く意思がなければ意味がありません。また、高齢の方の場合、すでにかかりつけ医がいらっしゃることが多いので、新規の医療機関を紹介しても躊躇してしまうことも多々あります。
ですので、患者様とのカウンセリングを通じ、心理的な抵抗を緩和したうえで性格や生活環境などを把握して総合的に判断し、紹介状を書くか書かないか決めています。
医科歯科連携による安心感が治療意欲の向上につながる
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングのリスク評価をもとに、紹介状を書いた具体例などはございますか。
まず、60代女性の患者様の事例をご紹介します。歯周病治療においてパノラマX線画像を撮影した際、スクリーニングを行い、皮質骨形態が重度異常で、皮質骨の形態指標(MCI分類)がⅢ型というリスク評価の結果が出ました。このリスク評価をもとに患者様にカウンセリングを実施し、同意を得て紹介状を書きました。
その後、紹介先の医院で詳しい骨密度検査を経て投薬を開始。生活指導と相まって治療意欲が向上し、歯周ポケット検査時のBOP(Bleeding On Probing:探針による出血)も減少しました。これにより、集中的な歯周病治療が行えるようになりました。当院としては、医科歯科連携による安心感が治療意欲の向上につながった事例だと考えています。
もうひとつ、高齢の女性患者様の事例をご紹介します。この方は口が達者なとても元気な方で、先日、久々に当院にいらっしゃいました。ただ、明らかに足腰が弱っているようでしたので、こちらからパノラマX画像による骨粗鬆症スクリーニングを提案。結果、リスク評価は芳しくありませんでした。そこで、内科への紹介を経由して総合病院で骨密度の検査を実施。気づきにくい骨粗鬆症が早期に分かり、その方から感謝の言葉をいただきました。この件につきましては、早期発見がフレイルの向上につながる事例だと考えています。
患者の健康とQOL向上のため、医科歯科連携に取り組む
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを最大限に活用するためには、医科歯科連携が重要かと思います。澤野歯科クリニック様では、どのようにして医科歯科連携を構築されたのでしょうか。
当院では、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングに取り組む以前から積極的に医科歯科連携に取り組んでいます。その理由は、歯科治療と平行して医科治療が必要になるケースがあるからです。例えば、重度の歯周病の場合、歯科治療だけでは治癒が遅いことがあります。こうしたケースでは糖尿病などの基礎疾患の疑いがあるため、まずは病状を改善することが先決となります。実際に当院で血糖値を測定し、数値が高いときには近隣の医科を紹介して、詳しい検査をおすすめすることもあります。
医科歯科連携の構築方法は近隣の医院に対し、こちらから積極的にお声がけしていくスタイルです。何よりも大事なのは患者様の健康を取り戻すこと、QOL(Quality of Life:生活の質)を向上させることですので、軽いフットワークを心がけて医科歯科連携の構築に取り組んでいます。おかげさまで、今ではプライベートでも懇意にさせていただいている内科の先生に出会うこともできました。
――パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングの取り組みをはじめられる際は、近隣の医院に本取り組みのご案内をされたのでしょうか。
おっしゃる通り、パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを実施することを案内させていただきました。医院によっては骨密度検査に未対応の場合があるため、近隣の医院にまんべんなくお声がけし、骨粗鬆症に関連した医科歯科連携が可能かどうか、しっかり把握しておくことが大事だと思います。
パノラマX線画像による顎骨脆弱度評価実施画面
パノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングが、患者との信頼関係向上と医科歯科連携の促進に貢献
――本取り組みをはじめて得られた効果があれば教えてください。
もちろん、医科歯科連携の構築にも有効な取り組みだと思います。本取り組みをきっかけに、医科の先生方をはじめ、地域のさまざまな医療機関の関係者や医師会などにもお声がけできるため、将来的な地域の医療コミュニティ形成に貢献できる可能性があります。実際、当院でも医科歯科連携を通じて総合病院からフィードバックをいただくことがあります。こうした連携が進むことで、地域連携の強化につながり、包括的かつシームレスな医療サービスの提供が可能になります。ひいては、自院の評判や価値の向上にもつながると考えています。
引き続き積極的にパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを実施していく
――今後の骨粗鬆症に対する取り組みについてお聞かせください。
早めに気づくという意味では、多角的に検知できる体制が好ましく、なかでも歯科が果たす役割は大きいと考えています。なぜなら、人体の入り口は口であり、その口の治療を行うのが歯科だからです。
事実、オーラルフレイルを確認する一チャネルとしてパノラマX線画像による骨粗鬆症スクリーニングを実施し、骨粗鬆症のリスクに早く気づくことができれば、全身のフレイルに進行する前に対処できる可能性が向上します。気づきの遅速で、患者様をサポートするご家族の負担も変わってきますので、当院としては引き続き積極的に本取り組みを実施していくつもりです。


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